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とある廃工場で、銃声が響き渡る 発砲音が響くたび、雄叫びが一つ、消えていく 「がああああああああああ!!!!」 麻薬中毒者が、雄叫びを上げて警官たちに突撃してくる 一人の中年警官は、怯むことなく発砲した 撃ち出された弾は吸い込まれるように麻薬中毒者に命中した 麻薬中毒者は、ただの麻薬中毒者ではなく…今、学校町を騒がせているコーク・ロア支配型の被害者 そして、それに向かって撃ち出された銃弾もまた、ただの銃弾ではなかった 銃弾は相手の体内に入り込むと同時に、中に入り込んでいた液体が体内へと溶け込んでいき…コーク・ロア支配型の被害者は、びくりと体を震わせて、その場に倒れた 銃弾に込められていた液体は…薬品は、コーク・ロア支配型の影響を除去するものだ 「組織」が、コーク・ロア支配型の被害者を救済するために使っている薬品と、同じものだ 「よし、これで最後だな…無事かー?」 「はい。坂上は…!?」 「こっちも無事だ」 コーク・ロア支配型被害者達と応戦していたのは、三人の男性警察官 「……皆さん、ご苦労様でした。被害者達を回収しましょう」 そして、それらに指示を出していたのは、一人の女性警官だ 女性警官の名前は広瀬 美緒 …「組織」に通じて、学校町の都市伝説絡みの事件を、もみ消し続けている その代償として、都市伝説絡みの事件の解決を「組織」に任せているのだ そんな彼女が、部下を伴って、コーク・ロア支配型被害者の制圧に…都市伝説絡みの事件に動くなど、異質な光景である 「まったく。こんな銃弾、どこで手に入れたんだ?」 「…あなた達を、わざわざ都市伝説絡みの事件に関わらせたのです。余計な質問は受け付けません」 中年警官の言葉に、広瀬は冷たくそう答えた その表情は、酷く苦々しい 本当ならば、彼女は部下を都市伝説絡みの事件に巻き込ませたくはないのだ しかし、彼らはどうしても、都市伝説事件に関わっていってしまう …ならば 前もって、危険度の少ない都市伝説事件に関わらせて、危険な都市伝説事件と関わらせないようにするしか、ない それが、彼女が見つけ出した答えなのだ だが、それでも…彼女からは、迷いが消えない 「…それでは、この場は任せます。私は、残党がいないか、調べてきますから」 「一人で行かない方がいいんじゃないか?現場は慣れてないだろ」 「…馬鹿にしないでください。訴えますよ?勝ちますよ?」 中年警官の言葉にそう答え、彼女は廃工場の奥へと踏み込んでいく …「組織」から得た情報によれば、コーク・ロア支配型の被害者達が暴れている傍には、高確立でその支配者が存在する 恐らく、遠く離れすぎると、指令が届かないのだろう ……ならば、この廃工場内に、先ほど部下達が制圧した被害者達を操っていた者がいる可能性は高い 広瀬は銃を手に、警戒して歩く ……ぴちゃり、ぐちゃり 小さな音が、聞こえてきた 「………?」 ゆっくりと 警戒しながら、そちらに向かう そして 「----っ!!」 彼女は、見てしまった 死体を喰らう、犬を 顔が、手が、脚が 犬達に、食い散らかされている、その現場を 血の匂いが、辺り一面に漂っている 「う………」 嘔吐感を堪える広瀬 後ずさった拍子に…カタン、と、小さく、音がなってしまって ぴくり 犬達が、一斉に、広瀬の方を向いた 慌てて、犬達に銃を向ける しかし、一匹の犬が、そんな事に構う事なく、広瀬に向かって飛び掛り 「っぎゃん!!??」 「…!」 何者かに、弾かれた 「大丈夫ですか?」 「…影守、さん?」 かごめかごめの契約者、影守蔵人が、広瀬と犬達の間に割り込んできていた 刀を構え、犬達を睨みつけている 「何故、あなたがここに…」 「コーク・ロアが出没したって報告がきたから、僕に仕事が回されたんです…どうやら、契約者は既に、口封じされた後のようですが」 犬達が、唸り声をあげて広瀬と影守を睨みつける ……その、犬達の、向こう側から 「……「組織」の狗か」 かつん、と足音をたてて 尾なしの犬を引き連れた、灰色のコートを着た男が、姿を現した 冷たい眼差しで、広瀬と影守を睨みつけてくる 「あなたが親玉ですか?」 「…そうだ、と言ったら、どうする?」 刀を向けてきた影守に、男は嘲うように、そう言った 「組織」には、既に悪魔の囁きとコーク・ロア騒動の主犯の顔と名前は、情報が入ってくる …朝比奈 秀雄 影守の元に寄せられたその情報で見た写真の顔と、男の顔は一致していた 「その身柄、拘束させてもらいます」 この部屋は、扉が壊れてしまっていて、「かごめかごめ」の能力を発動できる状況下ではない そして、一応、上からの指示は「拘束しろ」と言うものである 殺せ、ではない だから、影守は忠実に、それに従おうとした 鍛えられた脚力で一瞬で朝比奈に近づき、みね打ちで相手を気絶させようとして ---っが!!と 鈍い音が、響く 「……!?」 片手で 影守の刀は、朝比奈の片手で、あっさりと受け止められた ぎろり、朝比奈が影守を睨む 「…私を、拘束する?……「組織」の狗風情が……私に、敵うとでも思っているのか!?」 「う、わっ!?」 「…影守さんっ!?」 ぶんっ!!と 影守の体は、朝比奈によって壁に向かって放り投げられ…広瀬の横を通り過ぎて、壁に叩きつけられた どごぉん!!と大きな音が響き渡り……壁が、崩れる 人間一人を片手で放り投げて…その衝撃で、壁が砕ける どれだけの怪力で投げたのだ? そして、その力で叩きつけられて…人間は、生きていられるのか? 広瀬は、急いで影守に駆け寄った 骨を痛めたのか、影守がうめいている 「影守さん……影守さん!」 「…駄目、です…相手に、背を、向けちゃ……!?」 己に駆け寄ってきた広瀬の背後で…朝比奈が、大きく息を吸い込んだ様子が、影守には見えた 逃げろ 本能が、そう叫ぶ 「っ…!?」 痛みを堪えて起き上がり、影守は自分を覗き込んできていた広瀬の体を、抱え上げる その、直後 朝比奈の口から吐き出された炎が、室内を包み込んだ 「-----うわっ!?」 ごぉうっ!!! その炎の先端は、中年警官たちがコーク・ロア被害者達を回収していたその部屋にも、ほんの少し入り込んだ どさり その炎から逃げてきた影守が…広瀬を庇うように抱きかかえた状態で、倒れこむ 背中を炎が掠ったのか、酷い火傷を負っていた 「…っ影守さん!影守さん、しっかりしてください!」 「おい!救急車を呼べ。早く!!」 広瀬が、気を失いかけている影守に必死に呼びかける その傍で、中年警官は若い警官に、救急車を呼ぶよう指示する 「…だ、大丈夫、ですから……これくらい、なら、「組織」で所持している、霊薬で…」 「しかし………!」 影守を、じっと見つめる広瀬 …その頬を、一瞬、光るものが伝ったように見えたのは、気のせいか? 「…私の、せいで………っ」 影守を見つめる、広瀬の体は 小さく、小さく、震え続けていたのだった to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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(裂邪 37度2分か・・・夏風邪かも知れんな。 (ミナワ そう・・・ですか・・・ ある夏の雨降る日。 裂邪は体温計の数字を見て悩んでいた。どうやらミナワが熱を出したらしい。 (裂邪 ここ暫く川で遊びすぎたかな・・・てか、都市伝説も風邪引くのか? (バク ただでさえ都市伝説がうようよしてるバクから、この町は何が起こっても不思議じゃないバク。 「都市伝説風邪」とか、契約者の間で噂にでもなってるんじゃないバクか? (裂邪 新しい病名出すなよ!不安になる! (シェイド マァ、ミナワハ人間タイプダカラ、人間ガ引クヨウナ風邪デモ感染シタノデハナイカ? 何レニセヨ、安静ハ必要ダナ。 (裂邪 もちろん。 でもごめんな、今日は登校日なんだ・・・できれば一緒にいてやりたいのに。 (ミナワ ありがとうございます。 お気持ちだけで十分ですよ。 主人様は、やるべきことをやって下さい。 (裂邪 ありがとう・・・じゃ、行ってくるわ。効くかわからんが、薬と水置いとくから飲んどいてくれ。 ちゃんと寝てなきゃダメだぞ? 元気になったら・・・あ、いいや。 (ミナワ 何だったんですかぁ~/// (裂邪 ウヒヒヒヒヒw あぁバクとウィル、外出を許可するってか、出ろ。 (ウィル 何故でい? (裂邪 バクが「都市伝説風邪」とか恐いこと言ってるからな。お前等まで感染されるとまずい。 (バク この雨で散歩しろっていうバクか!? (裂邪 爺さん婆さんはしょっちゅうやってるわ! (バク ハァ・・・変な事言うんじゃなかったバク・・・ オイラが風邪引いて帰ってきたら主の所為バクからね! (裂邪 「バク」は風邪引かないって相場が決まってんでい! (ウィル それあっしの・・・ (獏 そりゃ「バク」じゃねぇ「バカ」だバーカ! ぶつぶつ言いながら、獏はウィルと共にしとしとと雨降る空へ駆け上がった。 実はこうしていると獏の能力も向上するので、裂邪としては一石二鳥なのだが。 裂邪がふぅ、と溜息をつくと、シェイドはスッと影に溶ける。 (裂邪 ・・・じゃ、俺もそろそろっ! (ミナワ へ?あのちょっ・・・・・んん・・・・・ふあぁ! す、するならするって言ってくださいよぉ!/// それにうつっちゃったらどうするんですか!?/// (裂邪 ま、前から「行ってきます」のキスに憧れてたんだよ!/// それに、俺は風邪引いた事が無いから大丈夫! お互いに顔を真っ赤にして笑ったあと、裂邪は名残惜しそうに部屋を出た。 彼としては、大切な人のことが心配なのだろうが・・・やりすぎだ。 (ミナワ ・・・ご主人様ったらぁ・・・余計に熱くなっちゃいましたよぉ・・・/// ・・・・・・「元気になったら」・・・キス以上のこととkは、早く寝ませんと!/// 薬を飲み、ガバッと布団を顔までかけるミナワ。 暫く胸の高鳴りの所為で眠れなかったが、次第にうとうととし始めた。 数時間後。 パチッ、とミナワは目を開いた。 目の前には、お盆を持った黒いロングヘアの女性の姿。 (明美 あら、起こしちゃったかしら。 (ミナワ あ、いえ、そんなこt―――――えぇぇぇぇぇぇぇ!? 彼女は飛び起きて、壁の方に後退った。 しかし、明美は常に穏やかだった。 (明美 うふふ♪ もうお昼だから、御雑炊作ってきたんだけど、食べられそう? (ミナワ え、いや、あの、その・・・・ご、ご主人様の、お母様・・・でいらっしゃいますか? (明美 ええ。 (ミナワ わ、私が誰かとか、何でここにいるかとか・・・訊かないんですか? (明美 ミナワちゃんでしょ? いつも裂邪がお世話になってます。 (ミナワ あ、いえいえこちらこそ・・・ってご存知なんですか!? (明美 貴方の方が訊きたい事が多そうね; 明美はまずお盆をミナワに差し出した。 驚きの連続があってか、彼女は震えながらそれを受け取り、さじですくって口に運ぶ。 (ミナワ ・・・美味しい! (明美 よかった~、裂邪ったら、貴方の料理の方が気に入ってるみたいだから、ちょっと不安だったの。 (ミナワ そ、そんなことまでご存知だったんですか/// (明美 昔、都市伝説に襲われた事があってね、 それから都市伝説の姿が見えたりするようになっちゃって。 貴方達の事はここに来た時から気づいてたの。裂邪とマサヨシが契約者だってことも知ってたし。 (ミナワ そうだったんですか・・・ (明美 他にもね、裂邪と貴方の関係のことm (ミナワ ち、違います違います! そ、そんな気は、その・・・ご、ごめんなさい!/// (明美 謝らなくてもいいのよ? こっちとしては、嬉しかったの。 (ミナワ ・・・? (明美 あの子、昔から男の子も女の子も関係なく友達がいなくて、ずっと1人だったの。 だから、ミナワちゃんっていう友達がいるって知って、ちょっと安心しちゃって・・・ (ミナワ お母様・・・ (明美 あ、ごめんなさい、おかわり持ってこようかしら? (ミナワ いえ、ご馳走様でした。 ・・・あの、ご主人様の話、聞かせて頂いてもよろしいでしょうか? 明美は笑顔で首を縦に振り、ベッドに腰掛け、裂邪の話を始めた。 そしてまた数時間後。女の話は本当に長いものだ。 いつの間にか、話し手はミナワに替わっていた。 (ミナワ ―――それで、私がそのゴム人間という都市伝説に追い詰められてしまって、 全て諦めていたんですけど、そこにご主人様が現れて・・・はぁ、ご主人様ぁ・・・/// 勝手に頬を赤らめるミナワ。 明美はニヤニヤしながらそれを眺めていた。 (ミナワ ・・・あ、失礼しました!/// (明美 いいのよ。 ホントに好きなのね、裂邪の事。 (ミナワ そ、そんなぁ・・・/// (明美 そっか、裂邪が・・・そんなところだけミツに似てたのね。 (ミナワ ミツ?・・・あ、お父様ですか? (明美 そう。 さっき都市伝説に襲われたことがあるって言ったでしょ? その時都市伝説から私を助けてくれたのが、ミツだったの。 (ミナワ ご主人様と同じ・・・ (明美 普段からいたずらばっかりやってたけど、正義感だけはしっかり受け継いでたみたいね。 いたずらといえばミナワちゃん、裂邪に変なことされてない? (ミナワ ご、ご主人様はそんなことしませんよ! (明美 でも、朝からあっついヤツしてたんでしょ? (ミナワ どこまで知ってるんですかぁ~!/// (明美 うふふ♪ 裂邪が気に入るわけだわ。 (ミナワ え?/// チラ、と明美は時計に目をやると、はっと思い出したように立ち上がる。 (明美 ごめんなさい、もうすぐ裂邪が帰ってきちゃう。 あ、このことは内緒ね? (ミナワ はい。 今日は本当に・・・ありがとうございました! (明美 こちらこそありがと。 これからも裂邪をよろしくね。 ガチャッ、とドアを開けたが、立ち止まってそのまま振り返る。 (明美 結婚とかは、決まってるの? (ミナワ もぉ~! お母様のいじわるぅ~!/// 真っ赤になっているミナワを見て、明美はまた笑って部屋を出た。 彼女が部屋を出てすぐに、「ただいま」という声と、物凄いスピードで階段を駆け上がる音が聞こえた。 (裂邪 はぁ、はぁ・・・ミナワ! 大丈夫か!? (ミナワ はい、お陰様で。 (裂邪 ぐっすり眠ったか? 熱は計ったか? 飯は食べたか? 下着はこまめに替えたか? 脱いだパンツは何処だ? (ミナワ もぅ、心配しすぎですyって最後の質問要りませんよね!? (裂邪 バレたかw でもキスした後なんだから、パンツの中身とか気になるじゃない? (ミナワ ご主人様のえっちぃ/// ウヒヒヒ、と笑いながら、裂邪は机の上に鞄をおろし、教科書やノートを出す。 (ミナワ ・・・いいお母様ですね。 (裂邪 ん? お袋がどうした? (ミナワ あ、何でもありません。 (裂邪 ふぅん・・・む・・・・・・ 裂邪は何か考え事をしていた、かと思えば。 突然ミナワの両手を押さえた。 (ミナワ ほえ!? ご、ごしゅじ――― (裂邪 最近、シェイドを影の中に閉じ込めておく方法を知ってな。今ならバクとウィルもいないし・・・いい、だろ? (ミナワ あ、あの・・・・・・・・・・・・・はい♪ (獏 主てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! (ウィル 昼間っからなんて事を; (裂邪 げっ! は、早かったなお前等! (シェイド 裂邪貴様ァァァァァァァァァ! ヨクモ私ヲ閉ジ込メテクレタナァ!? (裂邪 しまった! 待てシェイド落ち着け! 俺は別にそんなつもりj (シェ+獏 聞く耳持たんわぁ! 獏は裂邪をベッドの上から引き摺り下ろし、シェイドと共に彼をボコボコにしだした。 もう、止められない・・・少し残念だったが、色々知る事ができて嬉しかったミナワであった。 ...END 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影
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前書き 世界観説明&プロフィール 飛ばしても可です。 また逢ったね。 前回の鈴宮南麻だ。 所でさ、僕の住んでいる街は、四ツ葉丘市桐羽郡槃町(よつばおかし きりゅうぐん たらいまち)と云う。 最後の世紀末に、銀河系同盟(GSA)が世界の7割を統一し、わが国ミュンテット(海雲鉄島)共和国もその一部になった訳。 マヤ歴の終わりが近付くと、国民は皆人が変わったようになった。 預言者の幼女が全国民を従え、銀河系同盟へ加盟。 それに、何だか宗教めいた怪しい団体も偶に見掛ける。 今では何人かに一人が、その新興団体に属し、団体同士で勢力争いをしているらしい。 さて、本題とするか・・・・・。 槃町は、窪地に位置する町で、僕の家はその中央付近にある。 街を横断・縦断する2つの道路が中央で交差し、十字の形を成している。 道は傾斜がある。 道沿いには繁華街もあるけど、左右に逸れれば静かな住宅街が続く。 僕の家の隣は大きな病院、ビルがある。 ビルといってもそんなに高くなくて、上空から見ても、少し目立つ程度。 車道に出る迄、徒歩5分といった所。 ネットで見掛けた噂話によると、どうもそのビルが怪しいらしいんだ・・・。 都市伝説は、東口から行ける隣町・桐羽町(きりゅうちょう)で手に入る。 桐羽町の中心部には、この周辺では珍しいビル群があるけど、町の半分近くは山で、山沿いは田圃が多いという極端な町だ。 山には神社があり、山の入り口には赤い鳥居が建っている。 そこから最も近い場所に、怪談や都市伝説関連の販売店、レンタル店や出版社が立ち並ぶ。 ネットではそこを「怪奇郷」と呼ぶらしい。 マニアの人がよく行くけど、レトロを感じる不思議な場所だ。 そこで買った本によると、どうやらお隣さんのビルが怪しいらしんだ。 写真も一致したから間違いない。 確かに最近、マニアと思しき連中が、夜、うろついてるように感じる。 案外友好的な人が多く、その内の一人から話し掛けられた事もある。 話の膨らみ次第、ドアに「取材お断り」の張り紙でもしようか・・・。 (続) キャラクター・プロフィール 名前 鈴宮南麻(すずみや なお) 1990年12月23日生まれ。 ショタ・男の娘属性。 今回の舞台は2006年なので、高校1年生の15歳。 帰宅部所属で、偶々通り掛かった振りをして都市伝説を買い求める等、都市伝説に対してはツンデレ。 学校は槃町の北側から行けて、そのまま桐羽町に行ける。 過去に男子10人以上に告白され振った経験を持つ。 対しガールズラブも苦手。 オタクに関しても同属嫌悪。 身長158㎝で体重50㎏。 小回りが良く、筋肉質で見た目よりかなり腕力が強い。 筋肉質は元から体質 だが、「舐められない為に」自宅でのトレーニングは毎日欠かす事がない。 好きな物は駄菓子と怪談話。 嫌いな物は嫌味。
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ぶぅぅぅん 黒こげた蝿たちが、飛びまわる ぶぅぅん、ぶぅぅん えぇい、いつの間にどれだけ増えやがったんだ、スパニッシュフライ 集まりすぎて蝿団子で気持ち悪っ!? 「おばーちゃん!」 『はいよっ!』 妹が、鏡婆に合図を出した声が聞こえてきた ぱっ、と 公衆トイレの洗面台前の鏡に、鏡婆が姿を現す ぶぅぅ………ぅぅぅぅん!!?? スパニッシュフライたちが、鏡に吸い寄せられる その群れごと、鏡婆が鏡に引き寄せているのだ …が、鏡の中に吸い込ませる訳じゃない あんなのに大量に入ってこられても、鏡婆も困るだろう 「しっかり狙えよ、花子さん」 「うんっ!」 女子トイレの中で 花子さんは、それが視界に入ってくるのを待つ ぶぅぅぅぅん……っ 「………今だ!!」 俺の合図で、激流を放つ花子さん 水は轟音をたててスパニッシュフライたちに襲い掛かり、その群れを飲み込んだ ぶぶぶぶぶぶぶ!?と、スパニッシュフライたちが、パニックを起こしているような羽音をたてる ごぽぽぽぽぽん スパニッシュフライたちは、花子さんによって…あっと言う間に、トイレに吸い込まれていったのだった 「…花子さん、大丈夫か?疲れてないか?」 「うんっ!」 ぴ!と、こちらの言葉に、花子さんは元気に答えてくる 「おばーちゃん、大丈夫?平気」 『あぁ、平気さね』 妹も、コンパクトミラーに映る鏡婆に、声をかけていた …不良教師から、『夢の国』とやらが、この町で何かやらかそうとしているらしい、と言う話を聞いて以来 俺達は連日、街中で都市伝説と戦っていた 今まで通り、契約者のいない、野良都市伝説ばかりだ その中でも…今回のスパニッシュフライの群れのような、動物的な連中ばかりと 「やっぱ、気が立ってんのかね…」 …何か、大きな災害が起こる前触れなどに 動物が、奇妙な集団行動を取る事が多いという その法則に、当て嵌まるのか、否か 動物レベルや昆虫レベルの頭脳の都市伝説たちが、最近、妙に暴れているような気がする 今回だって、公園で変な蝿の群れに囲まれた、と言う話を聞いて、やってきたのだ …うん、まさか、スパニッシュフライの群れだとは思わなかったけどな まさか、あの時うっかり逃がしたのがここまで増えた訳じゃないよな 違う個体から増えたんだよな!? 「ねー、兄貴」 「うん?」 「兄貴はさぁ……その、夢の国って言うのと。戦うの?」 じ、と 妹が、こっちを見つめてきた ちらり、花子さんに視線をやると、花子さんは「み?」と首をかしげている 「……できりゃあ、そんな物騒なもんとやりあいたくないけどな。火の粉を振り払う程度だな」 「…そう…」 …妹が、心配そうな顔をしてくる まったく、心配性なんだよ、お前は 「みー!だいじょーぶ!けーやくしゃは私が護るから!」 ぴぴ!! 元気に、花子さんが宣言してくれた …嬉しいのだが、若干、自分が情けなく感じる 「あはは、そうだね。花子さん。バカ兄貴をお願いね?」 「うん!」 くぉら、妹 そこまで、俺は信用ないか、こら 「お前こそ。できれば、関わるなよ?……鏡婆、こいつを頼んだ」 『はいな、わかってますよ』 「何よー!バカ兄貴の癖に生意気な!!」 ぎゃんぎゃん言ってくる妹の言葉を適当に聞き流し、俺は花子さんの頭を撫でた 頭を撫でられて、花子さんは嬉しそうに笑う …夢の国 そんな大それた都市伝説に、俺なんかが何を出来るか、わからない 花子さんは強いけれど、女子トイレ以外では、その力は弱まってしまう …夢の国は女子トイレに出没してはくれないだろう、常識で考えて だから、俺に出来る事は 「夢の国」の気配に反応するように暴れ回る都市伝説たちを、少しでも何とかする ……それくらいなのだ 終 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
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…そこは、血の海だった 一歩足を踏み入れると、ぴちゃり、どうしても血溜まりを踏んでしまう …これは、この靴はさっさと捨てた方が良さそうである いくら洗っても、このしみこんだ血の色は消えてはくれまい 「将門様ったらぁ。ご機嫌が良さそうねぇ」 くすりと、スーツに身を包んだキャリアウーマンが呟く 彼女はハイヒールを履いており、血溜まりに足を下ろしていても、特に問題はなさそうだ 彼女が契約している都市伝説は、目の前で起きている惨劇が恐ろしいのか、彼女の背後に隠れてぷるぷると震えている 「だなぁ。やっぱ、暴れてぇのかな?」 「たまには自分で戦わないと、勘が鈍ってしまうのよ」 くすり、微笑んだのは、キャリアウーマンとは別の、20代前半と思われる女性 びちゃり!飛んでくる血飛沫を浴びないよう、青年たちよりも少し離れた位置にいる 「うー…」 「ん?どうした?怖いか?」 「うー…ちょっと」 …にじにじ 少年は、青年の背後に隠れた ……それは、そうだろう この光景は、まだ10代に達していない少年には、刺激が強すぎる 彼らの主が、その辺りを配慮してくれるかどうか… …微妙である 大変と、その辺りは微妙である 何せ、時代の感覚が、イマイチズレている事もあるのだから はたして、配慮してくれているかどうか、微妙すぎる 青年の背後に隠れた少年 腕には、怪我でもしていたのか、痛々しく包帯が巻かれている …そもそもが、これがこの、惨劇の原因なのだが 「……くかかかかかかかかかかかかかか!!!」 主の笑い声が響き渡る ひゅん!と刀が振るわれ、武士の首が飛んだ 「…どうした、どうした!?貴様らの力はその程度かぁ!?弱い、弱いぞぉ!!その程度の力で、貴様らは主の仇討ちに挑んだとでも言うのかぁ!?」 向かってくる武士たちに、武者はそう声をかける 武士たちは、腹を裂かれたおどろおどろしい姿のまま、武者に襲い掛かっていく …しかし、武者には敵わない 武者は、迫ってくる武士たち相手に刀を、槍を振るい、一対多数の戦いで、互角以上の戦いを繰り広げていた …決して、武士たちが弱い訳ではない 武者が、強いのだ 武者と武士たちは、生きた時代が違う そして、互いに「呪い」と言う本質を持ってはいるが…その力量が、違いすぎるのだ 武者は、平将門 武士たちは…赤穂浪士 聞いたことあるだろうか? あの有名な、赤穂浪士たちの討ち入り 自分たちの正義を信じ、仇討ちを果たした者達は…しかしその後、切腹を命じられた 無念の思いを抱き、死んでいった武士たち その無念の想いが染み込んだ地…そこに、近代的な、セレブを象徴するような建築物が建てられた この地が、そんな呪われた地である事を、その建物を使用している者たちの、何人が知っているだろうか? その建築物で不幸が続き…その建築物は呪われている、という都市伝説が生まれた それは、赤穂浪士たちの無念と混ざり合い …新たに生まれた、呪いの都市伝説 それが、どうして、首塚と戦っているか、といえば 「………」 ちらり 青年は、自分の背後に隠れている少年を見つめた 腕を怪我した少年 その建築物を訪れた際、この少年は怪我をしてしまった 幸い、この少年が契約している都市伝説の力で、命は落とさなかったが…見ての通り、腕に怪我をしてしまった だが、都市伝説の力がなければ…きっと、この少年は命を落としていただろう 以前、その建物で命を落とした、幼子のように それに激怒したのが、将門だった 己の部下を傷つけられたのが気に食わない 子供に被害をもたらしたのが、気に食わない …将門とて、首塚を汚されれば、相手が子供であろうと容赦はしない ……しかし この少年は、ただ、あの建築物を訪れただけだった あの建物の建築に携わった訳でもなく、赤穂浪士たちを侮辱した訳でもない …それなのに、命を危うくするような目に合わされた 将門はそれに激怒して、刀を取った 「小童共に仕置きをしてくる」 と、そう言って 「…あ~、そろそろ終わるな」 残り、後一人 残った武士は一人だけだ しかし、その最後の一人も、決して、逃走などしようとせず、将門に刀を構え、攻撃の機会を窺っている 「……くくくくっ、引かぬか。我を前にして、恐怖もしないか」 くっくっく、と 将門は、さも面白そうに、笑っている …もしかしたら、当初の目的を見失っているんじゃないだろうか 若干、心配になってきた 「ならば、来るがいい!我に一矢報いて見せよ!!我は将門!首塚に祭られし祟り神、平将門であるぞ!!貴様ら程度の、ほんの数百年程度しか生きておらぬ小童でも!!!我に立ち向かうと言うならば、せめて一撃を加えてみせよ!!」 刀を手に、将門は挑発する その挑発に、乗るように……武士は、刀を構え、将門に突進した 将門は、それをよけようともしない ただ、ニヤリ、笑って ずぷりっ、と 武士の刀が、脇腹に刺さる… …はず、だったのだ 「………くかかかかかかかかかかかかかかかかか!!!」 笑い声が響きわたる 将門の胴体が、消えた ふわり、首が浮かび上がる 「……やばっ!?」 青年は、慌てて少年を抱えて背後に下がる きょとん、としている少年に、怒鳴るように声をかけた 「目ぇ閉じてろっ!!いいって言うまであけるなよ!?」 「…?う、うん」 ぎゅう、と目を閉じる少年 キャリアウーマンも、自身が契約している都市伝説と共に後ろに下がり…フィラルディア計画と契約しているあの女性など、さっさと自身の能力で安全圏まで避難していた ふわり 浮かび上がった、将門の顔 はらはらと、髪が落ち武者のように乱れだし、その顔に狂気が宿る 「褒めてやろうぞ。我に一矢報いんとした事を…だが、貴様らでは、我には敵わぬ。貴様らでは、まだ足りぬ。恨みも!怒りも!!憎しみも!!!我には到底及ばぬわぁっ!!!!!」 将門が目を見開くと、そこから血の涙が溢れ出した 口から漏れ出す声は怨霊の呻き声へと変わり、空間を揺らす 最後に残った武士一人 そんな将門に、じろり、睨まれて… ……ごきりっ 首が折れて……どさり、血溜まりの上に、倒れこんだ 「…将門様、やりすぎっすよ」 「む?そうであったか?」 ふわり 生首姿のまま浮かび、将門はくくくくっ、と笑う 不気味な姿ではあるが、これが本来の「首塚」将門の姿である 何せ、将門は首だけで、首塚のある場所まで飛んで来た、と言い伝えられているのだから 「我と同じ、呪いを司りし者共だ。全力で戦ってこそ、礼儀であろ?」 「…そーいうもんっすか」 「ふふっ、駄目ねぇ?男の子なんだから、そこら辺の心境はわかってあげなくちゃぁ」 くすくす、キャリアウーマンに笑われて、青年は臍を曲げる じゃらり、身につけているシルバーアクセサリーが音をたてた 「…む?ふぃらでるふぃあ計画の女子はどうした?」 「あー、将門様の呪いの力から逃れるために、こっから離脱したっすよ。先に戻ってるんじゃないすか?」 全力で戦うのが礼儀 それは、いいのだが …できれば、ギャラリーの事も少しは考えて欲しいものである 「ふむ、そうか。宴の準備でもはじめてくれていれば良いのだがな。勝ち戦の後は、宴に限る」 「あ、それじゃ、連絡しときますね~」 キャリアウーマンが携帯電話を取り出す フィラデルフィア計画の女に、酒やつまみを用意するよう、連絡するつもりなのだろう 青年は、あの女性には嫌われているから、自分が連絡するよりはいいだろう…と、青年はそう考える 「…む?どうした、そこの童は何故、目を閉じ続けている」 「将門様の今の姿、こいつには刺激強すぎっす。ショックで心臓止まりかねません」 ふわふわと、生首の姿のまま浮かぶ将門 これが、本来の姿であると…この少年も、わかっているだろうが しかし、刺激が強すぎる 都市伝説と関わっているくせに若干怖がりなこの少年、ショック死は言い過ぎとしても、多分気絶する 「む、そうか。では…」 っふ、と 将門に、胴体が戻った 落ち武者のようになっていた顔も、端整な武者の者へと戻る 「目ぇ、あけて大丈夫だぞ」 「ぁ……」 恐る恐る、少年が目をあける 将門はすたすたと少年に近づき…その頭を、やや乱暴に撫でた 「お前の怪我の借りは、返したぞ」 「………!」 ぱぁ、と 強張っていた少年の顔に、ようやく笑顔が浮かんだ 将門は、ようやく笑顔を取り戻した自分の配下の様子に満足すると 青年たちを従え、その場を後にした 後には、首を切り落とされた武士たちの死体が、ごろごろと転がっていたが… 都市伝説でしかなかったそれらは、やがて、消えた あれだけあった血溜まりすらも、まるで、何事もなかったかのように、消えうせ …後には、ただ元のままの、建築物の綺麗なロビーだけが、残ったのだった 終 前ページ次ページ連載 - 首塚
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賑やかな市場を、一人の黒服が歩いている 市場の中には、人ではない者がたくさんいて、皆一様に、妖しげな物を商っていた 黒服は店を一つ一つ丁寧に覗いていき、時には店主と何やら交渉しているのだが… しかし、目的の物は見つからない 「駄目だねぇ、解毒の類のアイテムは、全部品切れだ」 「そうですか…」 店主の言葉に、黒服はため息をついた …ゴブリンマーケットにすら、ないとは これは、完全に解毒アイテムは諦めて、マッドガッサーを倒す事に搾るべきだろうか? 「あんた、「薔薇十字団」とつながりがあるんだろう?あちらの魔女たちに解毒アイテム作成を依頼した方がいいんじゃないのか?」 「…毒物自体がなければ、解毒の薬も作成できないでしょうから」 「まぁ、確かになぁ」 違いない、と店主は苦笑した ごりごり、黒焦げのイモリを潰しつつ続けてくる 「特殊なガスを使うマッドガッサーねぇ。本当、厄介な奴が生まれたもんだ……せめて、「富山の薬売り」が来てくれていればなぁ」 「…?いらしていないのですか?こちらの店舗にも、薬を降ろしているのでしょう?」 「来てないんだよ。あちらさんに連絡したら、こっちに向かって出発したはずだって言うんだが」 「……トラブルにでも、巻き込まれたのでしょうか」 …本当に、悪い事は重なると言うか、タイミングが悪いと言うか… 「申し訳ありませんが、もし、「ユニコーンの角の粉末」などが入荷されましたら、ご連絡いただけますか?」 「はいよ。「薔薇十字団」から紹介されたあんた相手なら、それくらいいいだろ」 ありがとうございます、と頭を下げて …そして、黒服はゴブリンマーケットを後にした 「…お、来た来た、どうだったんだ?」 人気のない路地裏に、姿を現した黒服 彼を待っていたのは「日焼けマシン」の契約者と、Tさん、その契約者、そしてリカちゃんだ 赤マントたちと別れた後、黒服は「ゴブリンマーケット」で解毒の為のアイテムがないかどうか探す事にして …しかし、ゴブリンマーケットに入る事ができるのは、特殊なカードを持っている黒服だけだ その間、他の三人と一体は、黒服を待っていたのだ ……Tさんたちがいることによって、「日焼けマシン」の契約者はかなりの数のナンパから見逃されていたのだが…それは当人たちが気づいていない事実であるし、とりあえずこの場には特に影響のない事実である 「駄目ですね。完全に品切れ状態。入荷もいつになるかわからないそうです」 「ここも空振りか」 「…やっぱ、マッドガッサーを叩きのめすしかないのか?」 ため息をつくTさんと、やや物騒な提案をしてきた「日焼けマシン」の契約者 そうでしょうね、と黒服は小さくため息をついた 「……せめて、マッドガッサーの一味の戦力が、完全にわかればいいのですが…」 「チャラい兄ちゃんがマッドガッサーと遭遇した時、傍にもう一人いたんだよな?そいつも、何かの契約者なのか?」 「…さぁ?何か能力使ったような場面は見なかったからな…」 Tさんの契約者に尋ねられ、「日焼けマシン」の契約者は首をかしげる あの場面でマッドガッサーと一緒にいたのだから、仲間と見るべきだろう しかし、契約者だったにしても、何の契約者なのかわからない まだ見ぬ「スパニッシュフライ」の契約者なのか…もしかしたら、マッドガッサーの契約者である可能性だってあるのだ 能力を見ていない以上、彼女がどんな存在だったのか、推察の域を出ない 「まぁ、こちらでも出来る限り調べてみよう。馬鹿馬鹿しい計画ではあるが…実行されてはたまったものではない」 「全くです……こちらでも、「組織」で入手しました情報は、お伝えします」 「…「首塚」でも、わかった事は伝える。ただ、こっちは情報収集あんま得意じゃないから、期待はするなよ」 当面の方針は固まった ひとまず、黒服は「日焼けマシン」の契約者を連れて、Tさんたちと別れようとしたが 「------っが!?」 「ぎゃあっ!?」 聞こえてきたのは、悲鳴 「…?何だ?」 「喧嘩、のようですが…?」 ここの、更に奥、その小さな小道で、誰かが喧嘩しているようだった 打撲音やら怒号やら、悲鳴やらが聞こえてくる 「----ぐぎゃっ!?………っがぁ!!」 その小道から、吹き飛ばされてきた人影 しかし、それはすぐに驚異的な身体能力で跳ね上がり、元の道へと戻っていった ……先ほどの若者、目つきがおかしかった …まさか 「…「コーク・ロア」の影響者ですか」 「え?」 「まさか、「コーラには麻薬成分が含まれている」、か?」 「恐らくは」 先程の動きは、体の限界を無視してのものだ 高確率で、麻薬関連の都市伝説の気配がする そう言えば、「コーラには麻薬成分が含まれている」の都市伝説と契約した者で暴れている者がいる、と「組織」の連絡網で流されていた …マッドガッサーの件とは関係なさそうだが、放っておく訳にもいかない 「…それでは、Tさん、これで。私は少々、あちらの件を片付けてきます」 「あ……ま、待てよ」 Tさんにそう言って、黒服は打撃音が響く小道へと向かっていく 「日焼けマシン」の契約者が、慌ててその後を追いかけた Tさんたちは、そんな2人の後ろ姿を見つめて 「…どうするんだ?Tさん」 「どうするのー?」 「…まぁ、放っておく訳にもいかんか」 黒服は戦闘力がある訳でもないし、彼を護ろうとする「日焼けマシン」の契約者は、女性の体になったせいで戦闘力が落ちている コーク・ロアとの契約者がどんな人物かは知らないが…念のため、と言う言葉が世の中には存在する 危なくなった時に備えて、とTさんも二人の後を追いかけた 「--がはっ!?」 どさり また一人、若者が沈んだ っち、と、対峙していた青年が舌打ちする 「…弱いな。これで終わりか?」 「く、くそ……っ!?」 コーラのペットボトルを持った中年が、狼狽した表情を浮かべていた おかしい おかしいだろう 己の能力によって、身体能力を強化した若者たち それを操って戦わせていると言うのに…目の前の青年に、ただの一撃も与えられていない そして、10人近い数の相手と同時に戦いながらも、その青年は涼しい表情のままだ 「…いい加減、弱い奴と戦うのは嫌なんだよ……とっとと片付けさせてもらうぞ」 「ひっ………い、行けぇ、お前らぁあああ!!!!」 残った若者たちに、命令を下す 麻薬によって操られ、身体能力が強化された若者たちが青年に襲い掛かる 「…無駄だっつってんだろ!!」 怒号と共に、青年は驚異的な瞬発力で、若者の一人に接近した 大声で威圧されたのか、一瞬怯んだ若者の喉元に一撃が命中し、また一人沈む 鉄パイプを構えた若者が、青年の背後から一撃を加えようとしたが… 刹那 青年の姿が、消えた 「っな、どこに…………------っ!?」 どさり 沈む若者 何時の間にか青年は若者の背後に移動していて…そして、倒れた若者は、背中に無数の打撃を与えられたようだった これで、残りは一人 「雑魚じゃ相手にならねぇっつってんだろ!」 「ひ……ひぃっ!?」 ごっ!と残りの若者も、青年によって叩きのめされた …これで、残るは「コーク・ロア」の契約者、一人 じゃり、と青年は中年に近づいていく 「ひ、ひ…………ひぃいいいいいいいいいいっ!?」 「っと!?」 火事場のなんとやら、と言うやつか 中年は、青年を突き飛ばし、必死に逃げ出した …追うべきか? しかし、あんな弱い奴、別に見逃してもどうでもいいが… 青年がそう考えながら、逃げる中年に視線をやって 中年の逃げる先にいた、その2人の人影に…思わず、目を見開く 「どけぇっ!!」 中年は、目の前に現れた二人の人物を突き飛ばして逃げようと、闇雲に腕を振り回す しかし 「………っぎゃ!?」 ぺし、と その片割れの少女に、あっけなく脚払いを決められる 倒れこんだ中年を、黒服の男が押さえ込んだ 「…コーク・ロアですね……「組織」より、あなたの捕縛命令が出ています」 「ぐ……そ、「組織」だとぉ……!?」 がちゃり 手錠のような物をはめられた中年男性 …まぁ、そいつはいい どうでもいい それよりも 「………狂犬?」 「その呼び方やめ……って、え…………あぁっ!?」 青年に声をかけられた少女は、抗議しようとして…しかし、それは途中で悲鳴に変わった 慌てて黒服の影に隠れようとするが、もう遅い 「…どうしたんだよ、その姿」 何も知らないふりをして、そう尋ねる うぅぅ、と少女は…あいつは、居心地悪そうな表情を浮かべている 「…あなたは…確か」 「お久しぶりです」 にこり、黒服に笑いかけてやった あぁ、知っている お前は、知っているぞ? ……こいつを、幸せにしやがった、黒服め …コーク・ロアが操っていた若者たちは、どうやら一人の青年によって制圧されたようだった その青年の姿に見覚えがあって…黒服は、少々驚く そして…間が悪い、とそう思った 「日焼けマシン」の契約者にしてみれば、今は絶対に、顔を合わせたくない相手だったろうに 「どうしたんだよ、その胸、貧乳だけど………女にモテないのを悲観して、男相手に集中することにしたのか?」 「……今、俺はお前を半殺しにしても許されるよな?」 「よーし、落ち着け。その振り上げた拳を下ろしてくれ」 青年の言葉に、わりと本気で殴りかかろうと拳を握り緊めている「日焼けマシン」の契約者 まぁまぁ、と黒服は「日焼けマシン」の契約者を宥める 「…少々、この子は厄介な事に巻き込まれておりまして」 「またですか?…あなたが、こいつを厄介事に巻き込んでんじゃないでしょうね?」 青年にそう言われて、黒服は小さく苦笑する ……それを、否定できない事実 確かに、自分と関わった事でも、「日焼けマシン」の契約者は厄介事に巻き込まれてしまっているだろう あまり、否定できない 「別に、こいつのせいじゃないっ!」 苦笑する黒服を庇うように、「日焼けマシン」の契約者が前に出た やや面白く無さそうに、青年を睨みつけている 「はいはい、わかってるよ。そいつは、お前の親父代わりだもんな」 あぁ、それとも母親代わりか?と青年は笑ってくる …「日焼けマシン」の契約者の、幼馴染の青年 「日焼けマシン」の契約者から、学校町に戻ってきているようだ、という話は聞いていたが ……本当に、こんな時に顔を合わせてしまうとは だが、同時に、黒服は少しほっとしていた 「日焼けマシン」の契約者にとっての、大切な友人 彼は、昔とあまり変わりがないようだった 昔と同じように、友人である「日焼けマシン」の契約者を気遣って、こちらに噛み付くような物言いをしてくる …「日焼けマシン」の契約者を気遣っているのは、自分だけではない 他にも、ちゃんといるのだ 「……まぁ、いいや。何があったか知らないけど、お前なら大丈夫だろ?俺で力になれるようだったら相談に乗ってやるからな?」 「う………悪ぃ」 青年の言葉に、「日焼けマシン」の契約者はそう返す 「日焼けマシン」の契約者は、この青年を都市伝説に絡ませるのを嫌っているのだ 怪異に踏み込んでいない存在を、踏み込ませたくないのだろう 「…先程の、喧嘩ですが」 「あぁ、あっちが挑んできたんだよ。本当、迷惑だ」 肩をすくめてくる青年 …一応、気づいていない、か ギリギリのラインで、彼は昔から都市伝説に気付かないままだった …きっと、「日焼けマシン」の契約者は、そのままでいてくれ、と思っていることだろう 黒服とて、そう思う 都市伝説の存在に気づいていないのなら、気づかないままの方が……幸せだ 「いつでも連絡して来いよ?なんだったら、その貧乳デカくして欲しかったら、じっくり揉んでやるから」 「やっぱり、半殺しにしていいよな?」 「おぉ、怖い怖い。それじゃあ」 ひらひらと手を振って、青年はこの場を後にする ……はぁーーー、と「日焼けマシン」の契約者は、深く、深くため息をついた 「…どうして、こうも見られたくない連中に限って……」 「……厄日、と言うものはあるものですね」 そっと、黒服は慰めるように「日焼けマシン」の契約者の頭を撫でてやる うー、と、「日焼けマシン」の契約者は、複雑そうな表情だ 「何?知り合いだったのか?」 ひょこりっ 事の成り行きを見守っていたらしいTさんの契約者が、顔を出してきた あぁ、と「日焼けマシン」の契約者は頷く 「ダチだよ、俺の」 「おともだちー?」 首をかしげてくるリカちゃんに、あぁ、と「日焼けマシン」の契約者は応える ふーん、とTさんの契約者は返して… そして、どこか好奇心を含んだ様子で、続けてくる 「…ところで、「狂犬」って?」 「ぐ…!?な、なんでもねぇよ!!」 慌てて誤魔化している「日焼けマシン」の契約者 …まぁ、あの頃については、本人としては忘れたい部分もあるのだろう 黒服としても、あの時期については、極力触れないようにしてやっている 「…しかしまぁ、見事な物だ」 道で気絶している10人ほどの若者を見て、Tさんが呟く ものの見事に、全員叩きのめされている コーク・ロアの方から襲い掛かってきたのだから、正当防衛ではあるが… (…しかし、彼はそこまで強かったですかね…?) ……まぁ、黒服が知っているあの青年の最後の様子は、「日焼けマシン」の契約者が高校を卒業した頃の話だ あれから、もう三年は経っている 元々格闘技を習っていたようだったし、実力があがっていたのかもしれない そう考えて…ひとまずは、Tさんの契約者の好奇心から逃れようと必死な「日焼けマシン」の契約者を助ける事に、黒服は意識を傾けたのだった ------あぁ、妬ましい 相変わらず、幸せそうで 傍に、護ってやる奴なんていて あぁ、でも あの状態で、はたして護れるのか? あんな女の姿にされて 護りたい奴も護れないんじゃないのか? …あぁ、待ち遠しい あいつを屈服させてやるのだ 俺の力で、ねじ伏せてやるのだ あの幸せを、俺が叩き壊してやろう 俺に無断で、幸せになんてなりやがった、罰だ いつも通りの、いつからか歪んでしまった思考を抱えて 彼は一人、路地裏の奥へ奥へと、姿を消していくのだった 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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「ラジオなんて、小学校の時放送委員会でやった時以来だな…全然ラジオじゃなかったけど」 「俺は初めてだからな…進行はそっちに任すわ」「あ、あぁ」 「ということで始まりました、都市伝説ラジオ『ネタが無くなったから、やってみたかったから』。皆さん夏休みをいかがお過ごしでしょうか」 「すげーなげやりなタイトルだなオイ」「…そこ突っ込んだら負けだ。今夜から不定期で某ラジオ局からいろいろとお送りします」 「しかしラジオ局ってこんななんだなー」「とりあえずお相手は俺ことDJミートJrと…」 「DJブラックGがお送りするぜー」 「…で、このラジオではリスナーのみんなから寄せられた疑問質問怪奇現象に答えてく番組だ」 「つーわけで番組第一回にもかかわらずこんなにもお便り、というか紙束があるぜ」「ほとんどは作者のボツネタかメモだけどな」 「……「RPGツクールでなんか作る」…何コレ?」「さぁな…作者は気まぐれだから…」 「…あの野郎、しばらく書いてねぇと思ったらなんつーこと考えとんのだ…」「まぁ、馬鹿な妄想野郎だからな、アレ」 「……おっ、やっとまともな質問が…RN『公園の男獣』さんから「うわさの産物のいいおt…店員を教えてくれ」とのことだ」 「あいあい、それに関しては店長から資料が届いてるぞ」 店長(こっちゃんの契約者):店長なんでいろいろと こっちゃん(こっくりさん):仕入れ、都市伝説の客への対応 ノミ沢(ちっさいおっさん・童貞):接客、用心棒 金さん(二ノ宮金次郎・ハンバーグ爺さんに倒された奴の双子の弟):厨房 新入りくん(都市伝説の契約者):厨房とかいろいろ 他にも都市伝説系の奴いろいろ… 「…だそうだ。…あいつの弟だったのか…」 「あ、補足情報が作者から届いてるぜー。 「金さんは花子さんの契約者さんが通っている学校の石像で、骨格標本や人体模型と面識がある。 新入りくんはあのヤンデレブラコンさん」だってさ」 「……なんというかこの場を借りて花子さんの契約者の人向けてここの作者に全力で土下座させておきます。熱い鉄板の上で」 「俺のほうからも布団の中に大量に虫しこんどきます。ほんとにすいません」 「…あといろいろあるんだろうけどなんつーかここから探し出すのがめんどくさいです」 「実際のところは作者の気まぐれってことだな、マジで氏ねばいいのに…」「全くだな、今度なんか食べ合わせ食わせてやろうぜ」 「いや、それよかGを布団あたりにしこんどきゃいいんじゃね?」「いや、作者は実のところ一匹くらいのGなら喜ぶぞ、馬鹿だから」 「ほんとあれ、馬鹿だよな。この間なんk…あ?もう時間?こっから面白くなるのに…」 「圧力って怖いな…つーことで今夜のお相手は 闇夜に光る黒い騎士 ことDJブラックGと…」 「妄想と厨二と肉塊の申し子 ことDJミートJrがお送りしました」 前ページ次ページ連載 - わが町のハンバーグ
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「悪いんだけどさ、お嬢ちゃん」 男は嫌悪感を抱かずにはいられない、嫌らしい笑みを浮かべながら、口を開いた。 「この包丁で、君の両親、殺して?」 男が指差す先には、縄で縛られ頭から血を流し、ぐったりとした男女。 「……………………」 少女は奮える手で、男から包丁を受けとると 「………………!」 「お?」 そのまま、男に向けて突き刺した。 けれど、その包丁は男には刺さらなかった。 まるで、男の身体が石でできているかのように、硬質な音を響かせ、包丁は止まってしまう。 「いけないなあ、お嬢ちゃんは」 「…………っ!」 男は少女を殴る。 男の握りこぶしには、びっしりとフジツボがはえていた。 男は、それなりに有名な部類となる都市伝説と契約していた。 有名なだけあって、男の能力を見れば一目で何の都市伝説て契約しているか分かるだろう。 もちろん、都市伝説の関係者なら、だが。 そして、数時間前まで一般人だった少女にとって、その男は化け物以外の何者でもなかった。 「あのね、お嬢ちゃん。弱い奴は強い奴に逆らっちゃ駄目なんだよ。これ、社会の常識ね」 「……………………」 頭から血を滲ませる少女に、男は再び、包丁を握らせる。 「ほら、ちゃんと握って。上手に殺せたら、ご褒美をあげよう」 そう言って男は、下品な笑みを浮かべ、少女の身体を舐めるように見回す。 「でも、上手にできなかったら……」 男は少女の視界に、握りこぶしをちらつかせる。 「………………!」 少女は、頭の痛みに、目の前の化け物に怯え、しっかりと、包丁を握りしめる。 そうして、ふらふらと、微かに息をしている両親の前に立った。 「よくできたねえ。ご褒美あげるからね」 吐き気をもよおす笑みを浮かべながら、裸の男が少女にのしかかる。 もはや、泣く気力もない少女の手にはいつの間にか、 何かのカプセルが握られていた。 終
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悪の秘密結社 11 ぴん、と 金属を弾く澄んだ音が響く 空中踊る十円玉をぱしりと掴み取り、くいと引き絞る 「こっくりさんこっくりさん、ヴィクトリアとかいう女の隠れ家はこの先か」 その言葉に応じて、三Z-No.592の肩に群れていた人の獣耳尻尾の少女達がぱっと散開し、頑丈そうな鉄扉に群がっていく 少女達が嬉しそうにぺしぺしと扉を叩くと、扉に『こ』『の』『と』『び』『ら』『の』『さ』『き』という文字が浮かび上がっていく 「ひのふの……八文字か、充分だな」 「がんばったよー」 「ほめてほめてー」 「あとでなでてー」 腕に群がる少女達から、爆発的に膨れ上がった霊力が十円玉に注がれる 「いちげきひっさーつ!」 狐少女の号令と共に放たれた十円玉は、轟音と共に冷凍用の倉庫ほどもある鋼鉄製の扉を易々とひしゃげさせ、建物そものを揺るがせた 「お、吹っ飛ばなかったか。すげぇ頑丈」 曲がった極太のビス数本で、辛うじて壁にぶら下がっていた扉を、豪快に蹴り飛ばすZ-No.592 暗い下り階段を、壁に引っ掛かり表面を削りながら転げ落ちていく扉だったもの 「さーって、お邪魔しますよーっと」 ポケットに手を突っ込んで、じゃらりと十円玉の量を確認し Z-No.592はきゃいきゃいとはしゃく少女達を率いて、階段を軽い足取りで降りていく あちこちが落ちた扉に削られへこまされたコンクリートの階段を、こつこつと どこか色合いのおかしい照明に照らされて、深く深くへと 「あー、なんつーかこれ、アレかな」 表向きは古臭いビルでしかなかった建物の地下に、洞窟でもくり抜いて最新の軍事基地でも差し込んだかのような、ちぐはぐな通路が伸びている光景 無意味に無駄に無闇に、あちこちでちかちかと明滅するランプ Z-No.592はぽんと手を打つ 「悪の秘密結社、ってやつか」 通路の先に、じわりと浮かび上がるように現れる、黒い全身タイツのような姿の戦闘員達 「正義の味方ってガラじゃないんだけどね、俺」 質量を感じさせない、奇妙なステップで向かってくる戦闘員達に、くいと腕を突き出して 「まあ、アレだよ。乗ってやる」 十枚ほどの十円玉を握り込み、Z-No.592は叫ぶ 「こっくりさんこっくりさん! どうせこいつら、一発でぶっ倒せんだろ!」 「はったおせー!」 「ぶったおせー!」 「ですとろーい!」 飛び交う狐、狗、狸の少女達が、戦闘員の額に、左胸に、次々と触れて『はい』の文字を浮かび上がらせ 「それじゃあまとめて! さようならっと!」 その手から放たれた十円玉は絡み合うような軌道で通路を縦横無尽に駆け、戦闘員達の頭部を、胸を、容赦無く貫いていく 「個も持たねぇがらんどうの雑魚は引っ込んでな!」 「じゃあ、雑魚でなければいいのね?」 ぱきん、と 乾いた音を立てて、十円玉の一枚が真っ二つに割れる 「ようこそ、我ら『悪の秘密結社』の秘密基地へ」 満面の笑顔で両手を広げ、心の底から歓迎の意を表した、似た面影を持つ数人の女 「あんたがヴィクトリア? ああ、あんた『達』かな?」 「ええ、近しい方々からはヴィッキー、もしくは教授と呼ばれています。以後お見知り置きを」 「んで、後ろの毛色の違う連中は?」 Z-No.592が放った十円玉を叩き割った何者か その姿は、人間の造形に昆虫の外殻を貼り付けたような、不気味な姿 戦闘に立つ一人は、すらりとした赤い鞘翅を背負った女性のような姿をしており 大きな複眼に覆われた頭部と、人の面影を残した頬から顎のラインを隠すように覆う甲殻が、僅かに震える 「ネエ」 感情の篭らない声が、二の句を告げる 「ワタシ、キレイ?」 「『口裂け女』みたいな文言だな。まーフォルムは綺麗だと思うぜ、嫌いじゃない」 「キレイナノ? コレデモカ!」 口元を覆っていた甲殻がばくんと開き、昆虫らしい大きな顎がぎちりと開く 床を蹴り滑るように迫り来る赤い昆虫人間 その腕を覆う甲殻が変形し、蟷螂のような鎌が、蟹のような鋏が現れる 「オマエモオナジカオニシテヤロウカ!」 「まるっきり『口裂け女』じゃないかこいつ。お前、何しやがった」 視線はヴィッキーに向けたまま、赤い昆虫人間の刃を掻い潜り懐に潜り込み 普段は腕を支点に弓のように開くこっくりさんの台紙型の力場を、親指と人差し指の間に展開して、パチンコのように十円玉を番える 「こっくりさんこっくりさん、虫っぽいこいつの装甲薄いのはどこだ?」 ぽつぽつと、赤い昆虫人間の腹部に浮かび上がるいくつかの『お』『な』『か』の文字 「悪いが、手加減できそうなほど余裕のある力量差じゃなさそうなんでな」 ずどん、と 鋭い衝撃音と共に赤い昆虫人間の身体が浮いて、突っ込んできた勢いそのままに空中に放り投げられ、通路に叩きつけられ転がったまま動かなくなった 「もう一回聞くが……こいつらは何なんだ?」 「我々の悲願ですよ」 ヴィッキーは笑顔のまま、苦労して作り上げたものを見せびらかすように、興奮を隠さず語る 「『悪の秘密結社』には、やはり怪人が必要でしょう?」 「今まで作れてなかったのかよ」 「殺して、死体から自分を模した『フランケンシュタインの怪物』を作ってはいたんですが……それはただの死体人形ですからね」 ねー、と顔を見合わせて肩を竦め合うヴィッキー達 「やっと私の趣味に合う方法で怪人を作るための技術を手に入れて、もう嬉しくてたまらないんですよ」 「随分と趣味が悪いこったな」 「そりゃあもう、『悪の秘密結社』のプロフェッサーたる者が、趣味が悪くないとダメでしょう?」 そう言うとヴィッキーは、きらきらと淡く輝く結晶体をポケットから取り出す 「これ、何だと思います?」 「俺に質問をするかね」 するりと十円玉を取り出し、腕に展開した台紙の上に置く 「こっくりさんこっくりさん、あれ何だ?」 その言葉に反応して、十円玉の上に手を置いた少女達が、やや戸惑いを浮かばせながら十円玉を動かしていく 十円玉が指し示した文字は『と』『し』『で』『ん』『せ』『つ』 「都市伝説?」 続けて少女達が指し示したのは『は』『な』『こ』『さ』『ん』という文字 「花子……さん」 その言葉に反応して、結晶体を持ったヴィッキーの後ろで、他のヴィッキーがぱちぱちと手を叩く 「優秀な都市伝説と契約しているのですね。素晴らしい」 「あんたに誉められても嬉しかないけどな……それが『花子さん』ってのはどういう意味だ」 「文字通りの意味ですけどね?」 手のひらの上で結晶体を転がし、弄びながらくすくすと笑い声を上げる 「都市伝説の人間化の研究、ご存知ですか?」 「それをかっぱらった馬鹿を叩きのめすために来たんだけどな、俺は」 「まあ研究内容を知っている前提でお話させてもらいますよ? 都市伝説の人間化というのは、手っ取り早い話……都市伝説の意志と記憶、つまり『魂』を取り出して保存、残る都市伝説要素のエネルギーを材料に人間の身体を構築するという錬金術です」 「らしいな。それが怪人を作る事にどう繋がるんだよ」 「簡単ですよ。『魂』を取り出した後のエネルギー、都市伝説としての存在そのものを結晶化したものが、これです」 ヴィッキーがぱちんと指を鳴らすと、背後に控えていた怪人がすいと道を開け 戦闘員が、一人の若い女を引き摺ってくる 「この結晶を、人間と合成するとどうなると思います?」 「……っ! こっくりさんこっくりさん、あいつの――」 Z-No.592が言葉に紡ぐよりも早く ヴィッキーの手の結晶は、焼けたナイフがチーズに刺さるかのように、するりと女性の後頭部に差し込まれる 「あ、ああああああ、ああああああああああああああ」 がくがくと震えながら、頭を押さえ身体を丸める女性 「契約という共生をするにせよ、呑み込むという支配をするにせよ……そこには互いの意志が存在しますが。それを介在しない場合、都市伝説というエネルギーに都市伝説という個が存在しない場合」 ぷちり、ぷちりと ぎちり、ぎちりと 音を立てて、女性の身体が変貌していく 「人体は、都市伝説というエネルギーを排除しようとします。強固な意志があれば充分可能なのかもしれませんが……例えば、脳改造などで命令を聞くだけの木偶人形などの場合」 髪の毛が抜け落ちて、頭部を覆う黒いおかっぱにも見えなくもない外骨格 肌が変質して盛り上がる甲殻の胸部を走る赤いラインは、吊りスカートの名残か 「本能と肉体が都市伝説エネルギーを拒否し排除しようとするものの、それは体表に留まりながら内部に浸透し……やがて変質したまま一体となるわけです」 腰周りに鎧のようなスカートのような甲殻が広がり 出来上がった『もの』は、『トイレの花子さん』をモチーフにした『怪人』としか言えない代物だった 「まだ一人につき一つの都市伝説しか埋め込めませんが。この結晶を複数埋め込めたり、取り外し可能にしたりするアタッチメントも製作中ですからご期待下さいね」 「なるほどね……こりゃまあ確かに、放っておくとやばそうだ」 「あなたの後ろのそれも、放っておくとまずいんですが。修理してはダメですか?」 「悪の秘密結社の怪人なんて、倒されてナンボなんじゃないのか?」 「それはそうですが。ではそのままで」 ヴィッキーがポケットから取り出したスイッチをぽちりと押し込むと、Z-No.592とヴィッキーの間に強固なアクリル板のような障壁がシャッターのように下りてくる 「最近はただ消滅するだけの怪人が多いですが……古式ゆかしい特撮の怪人って」 にたりとヴィッキーの笑顔が歪む 「死ぬと、爆発するんですよね」 「なっ――」 直後に、背後に感じた熱波と衝撃が Z-No.592の全てを飲み込んだ ――― 辛うじて、意識だけはまだあった だがその身体が原型を留めているのが不思議なぐらいの有様は、見ずともに判る 「こっくりさん、こっくりさん……俺、あとどんだけ、持つ?」 あわあわと泣きそうな顔をしている狐、狗、狸の少女 だが問われた事は問われたままに返すしかできない彼女達は、ただ十円玉を動かすだけしかできない 綴られた文字は『あ』『と』『ご』『ふ』『ん』 「……うっし、んじゃその五分で……こいつら全部、ブッ潰す」 Z-No.592の脳裏に浮かぶのは、目を覚ました途端に親友の心配をし そして、友人の無事を知らされると、今度は悪の存在を必死で伝えようとしていたメイの姿 都市伝説に呑まれかけ、その力と存在を否定されかけてなお、何処かの誰かに向けられる悪を止めて欲しいと懇願するその姿 「あの子に……心配かけらんねぇからな……きっちり……片付けてやんねぇと」 赤くぬめる指先で、焦げて歪んだ十円玉を掴み 突き出した腕に、弓状の力場を展開する 「こっくりさん、こっくりさん! あのクソ女は、間違いなく悪い奴だな! そして……怪人どもは、止めてやるべきだな!」 涙目の少女達が目にも留まらぬ速さでヴィッキー達に迫り その場に居る『悪の秘密結社』側の者、その全ての全身に余す事なく『はい』の文字を刻み付ける 「くたばれ、地獄で懺悔しろ」 放たれた数十枚の十円玉は、ドリルのように渦を巻き 先程の爆発に耐えた障壁をあっさりと打ち砕き、通路そのものを抉り取り、そこにある全てを粉微塵に粉砕していった ――― 重い地響きが伝わってくる様子に、さほど動じた様子も無くスピーカーの向こうで大首領がふむと唸る 《大丈夫かね、この基地は?》 「大丈夫でしょう。大首領の間はおろか、この研究室にすら届きませんよ」 笑いながら、ヴィッキーは一抱えほどもある大きなガラス容器を引っ張り出す それは大小様々なケーブルが容器の内部まで続いており、それに詰められたものに接続されていた 「あの黒服の少年は少々勿体無いですが、実験段階の怪人を相手に遊んでもらって、データを収集する事にします」 ガラス容器の中には、大量のケーブルやチューブが接続された、ミイラのような老婆の首が溶液に漬されていた それは、『ヴィクター・フランケンシュタイン』と契約したオリジナルのヴィクトリア 「さて、魂を移し変える技術が手に入った事ですし、実験も充分にしたので活用させてもらう事にしますよ。『フランケンシュタインの怪物』に任せ切りでは、『私』も面白く無いでしょうから」 そう語りながら、やや表情に残念そうな色を隠せない様子もある 「できれば、エルフリーデ女史か……メイちゃん、沙々耶ちゃん、いずれかの肉体が欲しかったですね。かつて善良な人間だった肉体を乗っ取るとか、悪の華でしたし」 溜息を一つ吐いて気を取り直し、ヴィッキーはいつもの調子に戻り 紋章の刻まれたレリーフの、大首領の声を伝えるスピーカーに向かってヴィッキーは深々と頭を下げる 「『私』のより一層の忠誠と悪意にご期待下さい、大首領閣下」 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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「デュエルの後に」 疾風「と、言うわけで前回の約束どおり言うことを聞いてもらいますよ」 小百合「覚悟はできてるわ。でも…へ、変なことはしないでね…?」 顔を赤らめながら言う小百合 疾風「…」 立ち上がり、荷物をまとめ始める疾風 小百合「待って冗談だから。サユリックジョークだから。帰ろうとしないで」 疾風「…今回だけですよ。ところで自由に顔を赤らめたりってできるんですか?」 小百合「え?普通にやるわよ?」 疾風「すごいな…あ、良く考えたら僕もできた気がする…とまぁそれはさておき。 今日小百合さんにやってもらうのは…これです!」 鞄からディスクケースを取り出す疾風 小百合「…ゲーム?」 疾風「そう、ゲームです。『都市伝説RPG(仮)』…ゲーム研究部で開発中のゲームです。 小百合さんにはこれをプレイして、感想を書いてもらいます」 小百合「え…それだけで良いの?」 疾風「あ、ちなみに感想は10×200の原稿用紙4枚分書いてきてください」 そう言って原稿用紙を渡す疾風 小百合「反省文!?」 疾風「あ、あとバグとか不具合とかを見つけたらそれも書いてください。箇条書きで良いですよ」 小百合「分かったわ…」 疾風「あ、これ説明書です」 説明書を渡す疾風 小百合「じゃあ早速プレイしてみるわね」 疾風「どうぞ。気が向いたら僕は帰りますんで」 小百合「それじゃあ早速パソコンに…」 パソコンを取り出し、ディスクを入れる小百合。パソコンの電源を入れ、タイトル画面を出した ~都市伝説RPG(仮)~ にア 初めから 続きから 設定 小百合「当然初めからよね」 ようこそ、都市伝説RPG(仮)の世界へ!▼ このゲームでは貴方の分身(主人公)が都市伝説契約者となって冒険するゲームです それでは貴方の性別を教えてください▼ にア 男 女 両性 無し 小百合「無しって何!? …ここは勿論女よね」 本当に女性ですか?▼ にア はい いいえ 小百合「はい…っと」 それでは主人公を作ります。作り方を選んでください にア カメラで作る 自分で作る 小百合「カメラで作る…? 面白そうね。丁度パソコンに付いてるし、やってみようかしら」 正面を撮ります。「 」に顔を合わせてください▼ 右側を撮ります(ry 左側を(ry 後側(ry 以上です。では、キャラクターを作成します。しばらくお待ち下さい…▼ キャラクターができました! これで宜しいですか?▼ にア これでいい 修正する 小百合「これ…私…! 何このクォリティ! すごいわね…これでいい…っと」 キャラクターが完成しました。ゲームを始める前に、少し質問をします。 あまり深く考えず、素直に答えてください▼ 小百合「何かしら?」 ――――質問終了後―――― 貴方は「女好き」ですね。貴方男性なら、将来犯罪など犯さぬよう、現実と虚構の区別を付けてください▼ え…? 女性…? ………… …気を取り直して、最初に契約する都市伝説を一つ決めます。以下から選んでください▼ 小百合「すごい! 当たってる…ってなんで最後誤魔化したのよ! ていうか何でゲームが誤魔化すのよ! …まあいいわ。とりあえず決めましょう」 にア 概念 歌謡 人型 生物 物品 悪魔 空間・異空間 夢 その他 小百合「私の『801フィルター』は『概念』に分類されるわよね…」 以下から選んでください▼ にア あ行 か行 さ行 た行 な行 次へ 小百合「次へ…っと」 は行 ま行 や行 ら行 わ行・ん 英数 小百合「英数…っと。で、801フィルターは…あった! これで決定ね!」 お疲れ様でした。それでは、冒険をお楽しみ下さい▼ 小百合「楽しみね♪」 サユリは自分の家のベッドに居る。目を覚ました 小百合「なかなか正統派のRPGみたいね…」 ――――――― 一時間後 小百合「くっ…あのヒロインの好感度が全然上がらないわ…いえ、でも諦めない! 私は! 貴方を! 必ずオトしてみせるッ!」 都市伝説RPGはRPGなのだが、恋愛ゲームとしても楽しめる。が、むしろ小百合はそっちを中心に楽しんでいた 疾風「あの…これRPGなんですけど…」 小百合「疾風君は黙ってて!!!」 疾風「すみません! …じゃ、じゃあ僕は帰りますね…ははは」 たまらず小百合の家を飛び出した疾風 疾風「…怖かった…。あれはやばいよ、かなりやばい…まさか恋愛機能にあそこまでのめりこむなんて… と、とりあえず終わるまで暇を潰してよう…とりあえず寝ようかな…」 ベッドに入る疾風。しかしまだ寝る時間ではない。故に眠れない その頃… 小百合「く…まだ高感度5…最大値まではまだまだね…」 そして時間は過ぎてゆき――翌朝 小百合「ふ…ふふふ…やっと好感度10…ここまで長かったわ…あ…もう6時ね…一旦セーブして朝ごはん食べないと…」 セーブして、朝食を食べる小百合。そしてなんやかんやで登校時間 小百合「そうだった…学校があるんだわ…行かないと…」 小百合には完全に生気が無かった。学校に付いた後も、疲れ果てた顔をしていた… 皆さんもお気をつけ下さい。ゲームは1日5時間以内。1時間やったら30分の休憩を。そうしないと、大変なことになりますよ…? 続く…